これは室町時代に描かれたある夫妻の像です。当時の京都妙蓮寺の有力な檀家であった渡辺浄慶妙慶夫妻の像は、日本でも数少ない夫婦が描かれた肖像画ですが、仲むつまじかったであろう生前の情景が目に浮かびます。
スーザン・ラコー博士は女性としての自らの経験から更年期を「海図もない未知の大海原への船出」と表現しましたが、更年期という荒波を乗り切るにはホルモン補充療法以外にもいろいろな方法があるでしょう。
「私を理解し支えてくれるやさしい夫がいれば、ホルモンのお薬はいりません」とおっしゃる方もあります。もしそれがこの渡辺夫妻のように可能であるなら素晴らしいことだと思います。まさに「夫婦愛は百薬にも勝る」と言うことでしょう。しかし残念なことに、昔も今も心やさしい夫は期待されるほど多くはありませんでした。そのような場合も含めて、誰でもいつでも利用可能なホルモン補充療法が 1 つの選択肢となってもいいと私は考えています。欠落したホルモンを補充することによって今までの老年期のイメージを変えることが出来るとすれば、それは女性にとっては十分に価値のあることではないでしょうか。
女性ホルモンは日本でもやっと市民権が認められるようになりました。これからは男性ホルモンであるテストステロンが、「昔の自分に可能な限り戻りたい」という女性の願いを叶え、生活に張りと潤いを与えるような心の基礎化粧品として役に立つことを、本日の講演で皆様にお伝えしたいと思っておりましたが、いかがでしたでしょうか。
画像は、奈良女子大学 加須屋誠博士のご好意によるものです。