12. 天道絵

 
余談ですが、ここに描かれている宮殿は帝釈天の住いであります。帝釈天は武勇の神様ですが、お酒も女の人も大好きな神様でした。主人公の天女はかってそこで雄々しい帝釈天と楽しく暮らしていましたが、ある時帝釈天は心変わりをして、彼女を見捨てて去って行きました。それに同調し他の天女達も彼女に冷淡になってしまいました。こうして老いた天女は孤独で寂しい暮らしを送らなければならなくなったのです。昔から男女の仲は難しかったようです。

さて、生物学の知識では、ほとんどの動物は自然の状態では閉経を迎える前に死んでしまいます。したがって天人五衰の描かれた平安時代末から鎌倉時代にかけては平均寿命が 30歳前後ですから、閉経後も生き続けた女性はほとんど無かったと思われます。その意味では40歳を過ぎれば立派な老人と見なされていました。しかし今では医学の進歩によって平均寿命が 80 歳を超え、特に多くの女性が生き生きとしたしかも自立した更年期以降の人生を楽しみたいとと思うようになっています。