9. ホルモン値の変動

 
今回は 50 代の女性ホルモン補充療法を受けている方を対象としましたが、テストステロンの基礎値は 10ng/dl で、ホルモン補充療法を受けている方とそうでない方ではほとんど差は見られませんでした。また 0.3mg と言う投与量では 1 時間後に 300 ~ 400 程度の血中濃度に上昇しますが、これは若年女性における正常値の 10 倍程度のレベルです。いずれにしろ臨床効果を発揮できる最低有効投与量などをエビデンスに基づいて早く設定したいと思っていますが、外国人と違って小柄な日本人女性の場合は投与量はもう少し少なくても良いかもしれません。(この点については、時間があればもう少し詳しくお話ししたいと思います)

モニタリングに際しては、テストステロンが血中から速やかに消失してゆくので、1 時間後の採血 (出来れば午前中) がポイントです。またアメリカでよく使用されているメチルテストステロンは通常のテストステロン測定系では測定できないので注意が必要です。

また患者さん自身に任されたクリーム剤の塗布という投与方法では、確実に規定量が投与されているかということも大事なポイントです。血中濃度が上がらなかったので不審に思ってよく聞いてみたところ、「先生には悪かったけど、聞いたこともない薬だし怖くてほとんど塗ってなかった。でも効果がありそうなことが分かったので、今後はまじめに塗ります」といった笑えないエピソードも有りました。