8. テストステロン補充療法

 
今回私達が行いましたテストステロン補充療法の実際についてご説明します。対象は、基本的には閉経期あるいは卵巣摘出術後の更年期障害の症状を訴えている方ですが、とくに性的な活力の減退や健康感の減少を訴えている方、通常のホルモン補充療法では症状が改善されない方などが適応になるかと思います。基本的には女性ホルモン補充療法と併用することが原則です。

さて女性にテストステロンを投与する場合、比較的少量を持続的に投与する事がポイントです。またテストステロンが 1 ~ 2 時間程度で血液中から消失してしまうことや、注射や経口投与では肝臓でのファーストパスによって不活化されやすいことを考慮して、現在はクリ - ム剤やゲル剤、パッチ剤など皮膚から直接血中へ投与する方法が主流となっています。今回のプロトコールでは、1 日の吸収量を約 0.3mg と計算し、これに相当するテストステロン 1% 含有のクリーム剤を外陰部に 1 日 1 ~ 2 回塗布しました。クリームを塗る場所を外陰部としたのは、外陰部の皮膚の角質層が最も薄く、その他の部分より吸収率が良いという理由によります。しかし外陰部では心理的な抵抗がある方には、下腹部でも構いません。なお皮下脂肪の厚さは吸収率には関係ありません。クリーム剤は大東製薬工業株式会社のご好意により提供して頂きました。現在、国内ではこの商品名 グローミン というクリーム剤が唯一女性にも使用可能なテストステロンの外用剤です。