ピル

ピルは誰でも安心して使えます
低用量ピルが使われるのは避妊の目的だけではありません。月経困難症(生理痛)や月経過多の改善、生理の調節、月経前症候群(PMS)の症状改善などの目的でも幅広く使用されています。当院では超低用量LEP製剤であるドロエチ錠の連続投与で、生理の回数を2~3ヶ月に1回程度に減らす新しい方法(保険適用)も行なっています。このように、低用量ピルは世界中で1億人の健康な女性に長年にわたって服用され、生活の質の向上が実感できるため、高校生から大人まで多くの女性から支持されています。女性アスリートを例にとってみると、北京オリンピックに出場した欧米の女性選手の83%がピルを服用していました。当時、日本人の女子選手では7%ぐらいしかなかったのですが、最近のリオオリンピックでは25%まで増えてきました。最近では、なでしこジャパンの澤穂希選手も長らくピルを服用していましたが、結婚後元気な女の赤ちゃんを出産されました。日本でピルが発売されてから15年以上たち少しづつですが、このように理解が進んで多くの女性に支持されてきたのはとてもうれしいことです。高校生から成人まですべての年齢の女性が様々な分野で活躍できるようサポートするのがピルの大きな役割だと考えています。なお、2021年に改定された学会のガイドラインではピルは50歳(従来は40歳まで)か閉経(のいずれか早い方)まで服用できることになりました。また最近の学術誌(Oncology)では、長期間ピルを服用すると中高年になってからの卵巣がんの予防になる(死亡リスクが40%減少する)ことが報告されました。

副作用の発生はほとんど気にならない程度です
一方で頻度は低いものの静脈血栓症などの有害事象(副反応)があるのも事実です。しかし重大な血栓症の頻度は妊娠や出産によるものほうが5倍も高いのです。また、死亡リスクもピルは妊娠合併症の240分の1程度です(日本・米国産婦人科学会見解)。副作用(血栓症)がこわいから出産はやめとこうという人はないですよね。また、たばこの生命リスクはピルの167倍もある(WHO)のに、残念ながら女性の喫煙はなかなか減りません。ピルのリスクは十分低く、安全性は高いことを知ってほしいと思います。大事なことは血栓症などを必要以上に心配するのではなく、万一発生したらなるべく早く発見し治療を行えば、重大な結果を避けることが出来るという点です。


もし副反応があってもすぐ発見できます
ピルの飲み始めによく見られる不愉快な症状は、吐き気・だるさ・頭痛・不正出血・むくみ、胸の張りなどです。ほとんどが軽い症状ですむことが多く、1~3 ヶ月飲み続けるうちに気にならなくなります。重大な副反応として血栓症(血管がつまること)があります。しかし喫煙、高年齢、肥満などのリスクがない方であれば重い血栓症が起きる心配はまずありません。このような症状のない方は安心してお薬を続けてください。当院ではピルの服用に先立って血栓症予防の血液検査(3000 円)を行い(初回のみ)、時間をかけて説明をおこないます。しかし残念ながら、ピルの服用前に血栓が作られやすい人かどうかの検査をしても、血栓症を完全に予測することは出来ません。大切なのは、足の膝から下のふくらはぎ(うしろ側の筋肉)の痛みがあるなど、血栓症が疑われる場合はすぐDダイマー検査などの専門の血液検査を行い、万一血栓症が発生しても早期に発見し治療することができるかどうかです。当院では松江赤十字病院などと連携して安全を確保していますので、まず当院にご連絡下さい。休日、時間外、夜間などには医院のホームページから連絡できます。なお、新型コロナワクチン接種に際しては、ピルの使用は問題ないとされているので、服用を中止する必要はありません。また、感染した場合はピルの服用を一時中止することが提案されています。(学会ガイドラインより)

薬があわなくとも心配いりません
服用開始後の不愉快な症状はしばらくお薬を続けているとほとんどなくなりますが、中には症状が強く続けることが困難な場合もあります。これはピルの中に含まれる黄体ホルモンと卵胞ホルモンという2種類のホルモンのうちの黄体ホルモンによるものです。第1世代から3世代までのピルには、それぞれ異なった種類の黄体ホルモンが使われています。ピルを変えると症状がなおるのはそのためです。ピルにも相性があるということですね。当院ではその人にあったピルを選べるように多くの低用量ピルを用意しています。また、ネット上ではピルの種類によって血栓の出来やすさに差があるという記述が見られますが、どのピルでも血栓症が(非常に低い確率ですが)起こりうると考えておくことが大切だと思います。繰り返しになりますが、先に述べたような症状が無ければ血栓症はありませんので安心してお薬を続けてください。

多くの種類のピルをそろえています
当院では、アンジュ(トリキュラー、ラベルフィーユは同等品)、ファボアール(マーベロンは同等品)、シンフェーズ (ルナベルはほぼ同等品)、ドロエチ(ヤーズと同等品)、フリウェル(ルナベルの後発品)と国内で発売されているほとんどすべての種類の低用量ピル (OC・LEP) をそろえています。日本では、ピルは病気の治療に使うお薬ではないため健康保険は使えません(対象になるLEPもあります) 通販 (個人輸入) のピルや緊急避妊薬を使っている人もありますが、これには医師の指導・管理がありませんし相談にものってもらえません。万が一副作用や深刻な事故が起こっても輸入業者は一切責任をとりません。体調に異変を感じたらすぐに病院で診てもらいましょうなどと小さく書いてあるだけです。またいくら外見が正規品とそっくりでも品質の保証は全くありませんし、発送地も信用できません。国内で販売されるお薬に適用される救済制度もありません。自己責任とはつまりそういうことです。長期的に服用するお薬なので、出来る限り安い方がいいという考えも分かりますが、口コミだけを信じて使用するのはリスクが高いとも思います。

ネット(オンライン)での購入
最近の「LINEのメールやチャットだけでお薬を郵送します」といういわゆる「オンライン診療」も、初めから対面診察がないものは細やかな指導や緊急時の対応ができませんし、ピル服用時にどうしても必要な血液検査などもできません。また、はっきりとクリニック(医療機関)名を明示しないで「アプリで診察 ピルが届く」「提携するクリニックの医師が質問やお困りの点を答えます」などとうたっているところがありますが、本当に医師や看護師、薬剤師などの専門職が責任を持って関与しているのか保証がありません。当院では出来るだけ客観的で正確な情報を分かりやすく提供するよう心がけています。 


診察や検査はありません
当院では服用開始のときや継続して服用中も、婦人科の診察(内診)やいろいろな検査(がん検診や性感染症などの分泌物検査、超音波エコー検査、肝機能などの血液検査)は必要がない限り行いません。窓口でお金を払ってお薬を貰うだけですのでとても簡単です。高校生以上であれば問題なく服用できます。数か月分をまとめて処方してもらうことも出来ます。1 か月分 (1 シート) が 2,000 円 (消費税込) です。学生の方には学割がありますので学生証を提示してご相談下さい。